相続&贈与
こんな贈与にご用心!
生前贈与対策として「子に現金を贈与して、すべて終わった」と思っていても、こんな贈与だと、将来の相続税の調査で「贈与契約そのものが無効」と認定されればお仕舞いです。相続財産に取り込まれ、相続税に加えて過少申告加算税や延滞税までかかってきて、せっかくの親心も水の泡に!
★ケース1 子どもの帰省時に、現金100万円を手渡し(贈与)した。
★ケース2 現金贈与した子ども名義の口座は親が管理。親の都合で引き出すことがある。
★ケース3 子ども名義の口座を作る際に、親(自分)の印鑑を取引印として使った。
★ケース4 子ども名義の贈与専用口座に、子に黙ってときどき現金を入金(贈与)している。
★ケース5 贈与税がかからないよう、ずっと毎年110万円ちょうどを贈与し続けている。
これらの事例はどこに問題があったのでしょうか、個別に検討してみましょう。
ちょっとした努力なくして、贈与の成功はなし!
◆ 銀行送金で、証拠は確実に! 【ケース1への考察】
マネーロンダリングとみられがちな現金贈与はやめましょう。ごまかす目的でなく、感動相続!のように「堂々贈与!」では”子に正々堂々と現金をプレゼントする”ため、銀行を使って「親の口座から子の口座に送金」し、贈与の証拠を残します。「送金手数料がもったいない!」という方がお出でですが、贈与するならケチらないこともポイントに。
銀行はわずかな手数料で、通帳に●いつ、●誰が、●誰に、●いくら送金してくれたか印字してくれます。贈与の証拠作りの手数料と考えれば、めちゃ安いのでは。
◆ 口座の管理は子ども自身に! 【ケース2と3への考察】
上記ケース2や3では、子ども名義の口座を、事実上、親が管理している点が問題です。また、取引印が親の印鑑と同じでは、仮に子どもが通帳を管理していても、親の借名口座(名義借り)と見られても仕方ありません。親としては「実際に贈与はしたものの、何かあったときには自分が使おう」と考えているケースも多く、これでは本当に贈与があったことにはなりません。親の都合で、子名義の口座から自由に入出金できるようでは「名義借り」とされ、相続発生時には親の財産として相続税の対象にされてしまいます。
未成年のときに作った口座でも、大学入学や成人式などをきっかけに、子ども自身に通帳と印鑑を管理させるなどしましょう。
渡したら使ってしまう恐れがあるというなら、現金贈与の後に、海外不動産投資のように英文で申し込むなどすれば、子どもでは解約もままならず、それでいて高利回りも期待できるため、子どもの資産形成としても頼りになりそうです。
◆ もらったことを認識させる! 【ケース4への考察】
子どもが、親から贈与されたことを知らない点が問題です。贈与は一種の契約で、「お互いの”あげた””もらった”という合意が必要」とされるため、子どもにも「もらった」事実の認識が必要とされるのです。
ましてや、子どもに黙ってお金だけあげていても、「親の、子を想う心」は伝わりません。上手に贈与して、子が親の愛情を感じられるようにされてはいかが。
◆ 連年贈与には気をつけよう! 【ケース5への考察】
毎年同じ金額、時期などに贈与をしていると、”連年贈与、定期金贈与”とされるリスクあります。
ケース5で最初から親子間で「10年間、毎年110万円ずつの贈与の約束があった」とみなされると、贈与の初年度にまとめて1,100万円相当の「定期金に関する評価の贈与」をしたことになり、多額の贈与税がかかってくることに。
贈与はふと思いたってするもの。お中元やお歳暮とは違うものと心得て、「贈与時期」と「贈与額」はその時々で変えて贈与するのが得策です。もちろん、贈与の証拠を残すために、子に120万円を贈与して贈与申告をすることも一つの方法です。
やるなら確実な贈与を!
簡単そうに思える現金贈与でも、このように落とし穴は各所にあります。やり方次第では、子や孫のデメリットとなるリスクがありますから、安易な贈与はお勧めできません。
税務調査で指摘を受けやすい、調査官に喜ばれるずぼらな贈与でなく、証拠を残す”堂々贈与!”で税務トラブルを未然に防ぎましょう。
不動産、有価証券などの贈与では、さらに注意する点が多くありますから、「こんな贈与をしているが問題はあるのか?」など、心配な方は一度ご相談を!