相続&贈与
親の相続で兄弟姉妹間で骨肉の争いとなり、仲違いのうえ疎遠にーといった事例は意外なほど多く、他人事ではありません。財産の多少にかかわらず、相続人の一人でも遺産分割の決め方や取り分に不満を持てば争いは避けられないのです。今回は、そんな”争族リスク”について考えてみましょう。
火ダネは相続人間の感情のもつれから!
● 財産規模は関係ない!
「ウチは財産がないから争いにはならない」という方が多いですが、では財産が多いと揉めるのでしょうか。2018年の遺産分割事件の調停成立件数のうち、財産が5千万円以下のケースが4分の3強です。
つまり、財産が多くても少くても、”ひとりでも不満を持てば”、相続トラブルにつながるわけです。
● 兄弟(姉妹)は他人の始まり!
相続トラブルで最も多いのが”兄弟姉妹間での争い”です。「親は姉にはあんなにしてあげたのに、自分はしてもらっていない」「自分は親の面倒をみたのに、弟はなにもしなかった」など、親子の長い歴史の中で蓄積された思いが親の死で一気に表面化して、骨肉の争いにつながるケースが多く見られます。
かつては「長男が家督(財産)を相続し、他の兄弟は相続財産なし。その代わりに、長男は他の兄弟の面倒をみる」という暗黙の了解が見受けられましたが、1948年に、子どもの法定相続分(財産を相続する権利)は皆同じになったことをきっかけにお互いに譲らず相続争いも増加したとか。
● 意識の変化も背景に!
戦後の民法で育った団塊世代前後の方は「兄弟(姉妹)は平等」の認識をお持ちの方が多いのが実際です。こうした相続人の意識の変化も”相続争い”勃発の背景にあるようです。親世代は子どもたちの意識を理解する必要があり、「兄弟(姉妹)仲良くやるだろう」ではなく、親の務めとして「将来にわたり、仲良くしてもらう」対策を生前にしておきたいものです。
一人っ子でも安心できないケースも!
会社社長(父)の相続では、一人っ子でも別のリスクが生じることがあります。
具体的には、社長の兄弟が役員・株主として経営に携わっているケースなどで、つぎのようなトラブルが考えられます。
● 社長と他の兄弟がうまくいっていない場合:
「兄弟の持つ会社の株式の買い取り」が必要に。
● 社長の持ち株割合が過半数を割っている場合:
「会社運営自体に支障をきたす」リスクが。
こうした事例では、社長兄弟の親(祖父)世代や社長世代での的確な事前対策が必要です。オーナー企業では、事業承継対策が早過ぎて困ることはありません。逆に、相続が迫って慌ててする事業承継対策は後日の争いのもとになりやすいのです。
”遺言があれば大丈夫!”というけれど
”相続争いを防ぐキーワードは遺言!”です。おおかたの書籍にはそう書かれていますが、遺言も万能ではありません。”親の心、子知らず”で、親の気持ちや想いを知ってもらうのに遺言書は有効ですが、作り方にはコツがありますし、遺言書の内容次第では、揉める火ダネを遺すことにもなりかねません。
こんな方は”相続争いリスクが高い”ので、早めの対策をお勧めします。
⇒ 不動産をたくさんお持ちの方(財産が自宅などの不動産だけの方も)
⇒ 自社株が多くの株主に分散している方
⇒ 子ども(=孫)がいない子ども夫婦
⇒ 高齢で再婚した夫婦
⇒ 離婚、再婚などで、家族関係が込み入っている方
心配になったら、お気軽にご相談を!