相続&贈与
贈与したのに相続時に「名義預金」とみなされ、相続税がかかってしまった話をご存じですか?税務調査では、子名義などの預金は被相続人(故人)が名前を借りただけの「借名口座」とされるケースがひん発しており、相続税がかかっています。今号では、「名義預金」とされぬよう、正しい贈与法をご紹介します。
「名義預金」だと、どうなる?
「名義預金」は自分以外の名義口座に預金をしておくことですが、見つかればどうなるのでしょう?
● 贈与は認められずに、相続財産として課税!
「名義預金」は相続後に子や孫が生活に困らぬようにとの思いから、コスト入らずの安易な”相続対策”として行われがちです。適切に手続きをしていなければ、税務調査では「名義預金(=借名口座への預金)」として相続財産に取り込まれるリスクが高くなると考えておきましょう。
● 漏れやすい名義預金!
国税庁発表の2018事務年度相続税の税務調査のまとめでは、申告漏れなどの誤りが発見された件数は85%以上にのぼり、申告漏れ総額(3,538億円)の36.5%(1,268億円)が現金・預貯金によるものでした。
さらに、この現金・預貯金による申告漏れの多くが「名義預金」と言われ、税務調査で調査官が必ず注目する相続財産(→名義上は、子や孫など)なのです。
「名義預金」とみなされるケースとその対処法
では、「名義預金」とみなされるケースを具体的にチェックしてみましょう。
つぎの”みなされるケース”で別名義口座に預金をすると、「名義預金」と判断される可能性が高くなります。一方、それぞれ右側の”対処法”のように対応しておけば「名義預金リスク」はかなり少なくなります。
みなされるケース 対 処 法
● 預金の存在を名義人(子など)が知らない ⇒名義人に預金の存在を周知しておく
● 預金の通帳・印鑑を被相続人が管理 ⇒預金の通帳・印鑑を名義人が管理しておく
● 被相続人と同じ印鑑を使用 ⇒名義人それぞれの印鑑を使用する
● 贈与した証拠がない ⇒”客観的な証拠”を残しておく
”客観的な証拠”って?
上述の「名義預金」とみなされない対処法にある”客観的な証拠”とはどういうことなのでしょうか?
実は難しいことではありません。”贈与の事実”を形に残すだけでよく、「贈与する側(被相続人)」と「贈与をされる側(妻・子・孫)」の双方が贈与があったことを認識していればよいのです。
具体的には、つぎの3つがあれば「名義預金」リスクはかなり低くなります。
● 贈与契約書の作成
贈与は、できる限り書類を作り、証拠を残しましょう。
民法では「○○をあげます」、「○○をもらいます」の意思表示だけで贈与が成立しますが、現実には、客観的に贈与の事実証明は難しく、面倒でも「贈与契約書」の作成をお勧めします。
● 贈与税の申告と納税
贈与税の非課税枠(110万円)内の贈与では贈与効果も小さく、贈与申告も不要で証拠が残りません。非課税枠にこだわらず、できるだけ多額にして贈与税の申告と納税をしましょう。わずかな贈与税をケチるよりも、「名義預金」リスクの方が多額になりがちです。
こうした対応も、税務調査時には”客観的な証拠のひとつ”として使えるのです。
● 通帳などへの振込みの記録
贈与でのお金のやり取りは、必ず、口座振込みなどの贈与者と受贈者の預金口座を通した形で記録を残しましょう。要は、銀行で振込依頼書を作成して、子や孫などの口座に送金すればよいだけです。
たったこれだけで、いつ(何月何日)、だれが(被相続人)、いくら(振込額)贈与したのかを通帳に印字してもらえ、証拠になるのです。よく聞く話が「振込手数料がもったいない」というもの。わずか1千円以下の振込手数料で証拠書類を作ってくれるのですから、銀行にも支払っても損はありません。
また、契約書や申告書があっても、お金のやり取りが不透明では「名義預金」リスクは残ります。
「名義預金」の有無は調査官が最初に検討する項目であり、申告漏れ№1の項目です。税務調査で後日に思いもかけない相続税を追徴されないように、名義預金には十分気をつけましょう。